愛の手掘り隧道 完結編 [廃墟・廃校・古道・隧道]

茂原の長谷トンネル・前回の写真は出口だけで、全貌がわかりにくかったので、再取材がてら、写真撮ってきた。皆様にご覧いただきたい。誰も興味を持たない隧道。でも、私にとっては可愛い隧道。
今回は、「愛の手掘り隧道・完結編」となる。

入り口は、とにかく鬱蒼としていて怖い。100%誰も通らない。何かあったら自力で逃げるしかない。
正直なところ、ヘビや猪が怖い。この辺りは、山ビルは多分大丈夫だろう。
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入り口から見上げると、隧道開通以前、子供たちが越えて通学していた山が見える。多分、あの木の間を下りてきたのだろう。
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険しすぎる!
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さあ!隧道に突入しよう!!
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全長38メートル・左に湾曲している。プロの仕事ではないので、直線ではないし、入り口の形もいびつだったりするが、そこにまた味があるのだ。

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写真で見ると分かるが、壁面も比較的乾燥していて、コケやカビもなく、虫や、コウモリもいないし、結構きれいだ。意外に爽やかな風が漂う。
ただ、もう、通学の子供たちの歓声が響くことはない・誰も通らない・・。
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無事に抜けたので今度は逆から見てみよう!

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入り口に戻った。空を見上げた。
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運よく和尚に合えたので(草刈りをしていた)、また質問すると喜んで答えてくれた。

一番聞きたかったのは、今年購入した茂原市の小冊子「茂原風土記シリーズ17・トンネルのはなし」(300円・平成10年発行※24年前)によると、隧道の完成は明治15年となっているが、和尚は、「昭和20年頃だ」と断言していることだ。
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とても良い方なのだが、話が脱線し、突然武田信玄の話題になったり、耳が遠いらしく、聞き間違えもあったり。私の質問以外の話題になるのを、根気強く軌道修正しながら、取材した。
※和尚の推定年齢は70代後半~80歳。

今回の証言
1・うちの寺は、田も広範囲にもっていて、毎年何俵ほどの年貢をいただいて、暮らしは良かった。しかし農地解放で収入は激減。慎ましい暮らしになった。現在は檀家も少なく暮らしは厳しい。
※現在は寺の補修もままならないようで、基礎の木材が腐食して傾いているのを、車のパンタジャッキで支えているのを見ました。

2・この寺の側道は私有地だった。農地解放で昭和22年頃町道になった。私道に隧道を掘り通学路にすることは考えにくい。故に昭和22年以降の完成だ。25年頃完成し30年に閉校すると、トンネルは使われなくなった。約5年しか使われなかった。

3・薫風小学校は、最初は神社系の、小さな寺子屋のような施設だった。小学校になったのは昭和に入ってから。だからそれまではトンネルは必要ない。

4・トンネル入り口、左上部の高台に庵があって、お坊さんが住んでいた。しかし明治の、通称「神仏分離令」を発端とする、廃仏毀釈運動によって、放火された(ええっ?!)。
*この話をした時、和尚の顔は曇った。
※日本中で多くの寺が被害に遭われたそうです。力のあるお寺、地域に根付いたお寺は、大丈夫だったらしいです。和尚の話によると、日本中の寺の、1割くらい焼かれたのではとの事。
お寺も大変だったのだ。

貴重な話が聞けたのだが、実は、和尚はトンネル掘削に立ち会っていないのだ。途中からこの寺を任されたそうなのだ(年度不明)。だから、それ以前の情報は、伝え聞いた話だという。事細かに矛盾を追求したいのだが、耳が遠く、話が脱線するのですごく時間がかかる。上の4つの情報も、聞き出すのに1時間くらいかかって、こちらのライフもめちゃくちゃ減るのだ。
※同時通訳の人が、20分が限界っていうでしょう?あんな感じ。


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結局、茂原市の教育委員会に電話で確認。しかし、100年以上昔の事なので、資料がなく、小冊子に書かれた「明治15年に掘られた」という一文は、過去に、生存者にインタビューした可能性もあるが、確認のしようがなく、わからないとの事。今後新たなことがわかれば、連絡をくれるとの事。とても丁寧に対応して下さった。忙しい市役所の方には、申し訳なかった。

世紀の大工事なら資料もあるだろうが‥。
明治に掘られたか、昭和に掘られたか、真相は歴史ロマンの中・といった所だろうか・・・

間違いない事は、この隧道は、小学生が安全に通学できるように、優しい村人たちによって掘られた、「愛の手掘り隧道」であることだ。

今回、明治~昭和前期・必死で生きた普通の人々の暮らしに触れたようで、嬉しい。現代に生きる自分の人生は緩くて平和で幸せだ。先達の方々のお陰で今がある。

愛の手掘り隧道・は、とりあえず完結としたい。機会があれば、別の手掘り隧道へ行ってみたい。

しかし、お寺の屋根を見上げると新たな疑問が・・
なんでハート2つなの?

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※和尚によると・・寺院の窓に釣り鐘のような形があるでしょう?あれと同じで、寺院建築デザインの一つ・だそうです(和尚個人の見解です)。
いや、歴史に触れると、更に謎が増えるんだな・・・



和尚に、お礼にと、スーパーで買っておいた団子をあげた。

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とても喜んで、傾けて団子が寄らないように水平に持ちながら、お礼に、更に話をしてくれようとした。こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。お会いできてよかった。


和尚さん・ありがとう。お元気で。

皆様の近所にも必ず、歴史を感じさせる遺跡があると思う。こんなご時世は特に、近所大冒険してはいかがだろうか。無名の方々が精一杯生きた証・それを取材で深く掘り下げる。とても楽しい思い出になると思う。本やネットに無い情報が手に入るととても嬉しいものだ。
取材を受ける年配の方々も、自分の幼い頃の事に興味を持ってもらえて、嬉しいと思う。


今回もお疲れDF.またいつか行こう!そろそろ雨が降りそうだ。
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※この隧道、そっと覗きに行けば、子供を大切にしていた村人の思いを、感じられるかもしれません



ではまた。


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tomi_tomi

凄い場所に行きましたね!私は躊躇しますが、ただ通り過ぎるだけでは何も分からないですね!!
by tomi_tomi (2022-06-13 06:56) 

のんびりヒーロー

tomi_tomiさん、いつもコメントありがとうございます。
昔賑わった場所なのに、今はもう誰も来ない・そんな場所に惹かれます。
by のんびりヒーロー (2022-06-13 14:51) 

響

入口から挑戦者を待つような
隧道ですね。
わたしも隧道大好きだけど一人だと怖い(笑)
by (2022-06-13 19:34) 

のんびりヒーロー

響さん、コメントありがとうございます。
そうなんです。お恥ずかしながら前回は、あまりに不気味な隧道の為、出口まで写真を撮れなかったのです。暗い、誰もいない、入り口横にはお墓、藪で行き止まり、何か出そう・だったので。(汗)。
by のんびりヒーロー (2022-06-13 22:12) 

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